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涙を、拭った。
言葉を紡ぐ、準備をした。
彼を傷付ける、準備をした。
「……いらないって、言ったでしょ」
本当は、震える左手を優しく包んであげたかった。
「…あたしには陽介がいるんだから。…あたしは陽介さえ居ればそれでいいの」
「…」
「爽太なんか、いらないの」
ぐっと眉間のシワを深めて、
目を、細める。
そんな彼の表情に
強く、つよく、胸を痛めた
彼を傷付けたことに傷付いた
彼が傷付いたことに傷付いた
「……そうかよ」
ふ、と
数秒の沈黙ののち、彼は静かに笑った。
「……手に負えねえや」
「……」
「もう、むり。…リタイア」
……………リタイア、
ーカチャ
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