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「爽太のバカ離してよばか!」
職員室を出て教室へ戻る途中だった。
ちょっ、そうた、
なんて焦ったように名前を呼んでてもずっと無視するから、むかってきて、あんな風に少し大きな声をだしてやったらやっとストップしてくれた。
二階へ続く階段の踊り場。
「ごめん」
「…っ」
ーーはい出たはい出ましたっ
謝ればいいと思ってる
取りあえず謝るその癖
むかつく、むかつく
口癖になってるソレ
やな口癖
なさけなーい!
なさけないっ!
「そーたのばかっ」
「…」
「も、やだあの先生たちっ好奇心むき出しの顔してっ」
「…」
「大切な生徒だなんてばかみたいっ爽太だけでしょー!」
あーっ
こんなこと言おうとしてたわけじゃ、別にないんだけどさっ
「だからヤなんだ!爽太と居るの!!」
ほんと迷惑!
そう叫んでから、爽太の視線があたしに無いことに気付く。
見上げてる視線の先には何故か智乃が居た。
智乃がゆっくりと階段を降りてくる。目線は爽太じゃなくてぽかんと見上げるあたしにあるみたいで。
なんだか少し、怒ってるようにも見える。
そしたら案の定あたしを見ながら彼女が口を開く。
「酷いよ」
……
なにが、と口に出せなくて頭で問う。
「ただの八つ当たりじゃない、爽太君は何も悪くないのに可哀想」
「ー…」
・・・なに、
「いいんだ岩下」
横から爽太が声を出した。
声を出さないあたしの代わりに弁解をしようとしてくれるのだ。
もし爽太がしなくてもあたしは黙ったままだろうけど。
智乃の視線が爽太へ移る。
「別に美湖はなんも悪くねえよ」
「でも…、」
「ありがとうやさしーな、けど美湖のことはオレが一番解ってるから平気だよ」
かっと、ほんのわずか智乃の頬が赤らんだ気がする。
どんな気持ちかわかんない。
好きな人が他の子をすごくすごく特別扱いしてるだなんて、どんな切なさ嫉妬悔しさ悲しさ、
けど智乃にだってわかんない
そんなにそんなに特別にされて今まできたのに、ふっとしらない間に他の女の子に恋愛感情抱かれてただなんて、そんな気持ち。
わかるわけないよ
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