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「なんで理由もなくオレが避けられんなきゃなんねんだよ!なあっ!」
「…おまえもう諦めたとか言ってたじゃん」
「いってねー!」
「……あそ、」
爽太は片足を立て立ち上がると大股でベッドへと近づく。
「なんでオレがあいつを諦めなきゃなんねえんだよ!」
…知らねえよ
「なんでアイツはオレを避けていられるんだよ!アイツはオレが居ないとだめだろうが!」
眉間に深く皺を寄せた爽太に、バッと目の前にコントローラーが差し出された。
それを怪訝な目で見つめながら片手ですっと避ける。
「………知らねえよもー…」
めんどくせえ
そうため息を吐くオレを気にするようもなく爽太はそのままソファーにもたれるようにして座り込んだ。
「なんてさ、オレ……ほんとはわかってるんだ美湖が怒ってる原因」
打って変わって覇気の落ちた声が腹の辺りから聞こえる。
肩肘を立てて枕を作り、その声の方へ顔を向けた。
「岩下なんだよな」
「…」
「気に入らないんだろうな、オレが岩下のこと好きって。自分だけのオレで居て欲しいんだ」
「じゃあさっさと岩下さんのこと辞めれば?」
「言おうとしたさ、けどなんかヒステリックでさアイツ聞き耳もたねんだ」
「どーすんの」
じっと見つめる爽太の表情はいかにも落ち込んでて、下がった睫毛が影をつくっている。
「正直もう岩下のことはいい」
「へえ」
「だって美湖と天秤に掛けたときに美湖より重いモノがあるか?」
…そんなの知るか
「オレは美湖が居ればそれでいーのに」
「…」
「…オレはいつまで美湖が居ないままいなきゃなんねえの?」
ふっと視線をあげる。
液晶がいまだ【game over】を表示したままだった。
側にあったリモコンに手を伸ばす。
爽太が曲げた膝に顔をうずめる。
「オレ、美湖が居なきゃ生きてけないー……」
ーープツン
電源が切れる。
真っ暗闇にソファーの前でうなだれ座り込む爽太と、その上で横になっている自分が映った。
「そーた、おまえさ」
「…」
「クレイジーだよな」
ふ、と
伏せる顔が微かにわらった気がした。
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