八つ当たり

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ーー キーンコーンカーンコーン また今日も朝が来て授業が始まって、 そして今終了を告げるチャイムが鳴る。 「みこーー」 名前を呼ぶ声にあたしは伏せていた顔を上げた。 夏芽がじぃっと見下ろしている。 「…はあい」 「だーいじょうぶか?」 「結局今日ずっと元気なかったね。なんなら今日くらい掃除休ませてもらえば?」 眉をハの字にした夏芽の隣で、亜子が薄く笑んだ口元に心配を滲ませた表情で言った。柔らかい手のひらが降りてきてふわっと頭を撫でられる。 「……うん……でも平気…昨日帰っちゃったから今日はちゃんとしないと森ちゃんに怒られちゃうし、」 「じゃああたしたち手伝うからさ、ね、亜子」 「それはもちろん、でも……」 言葉を切った亜子が控えめに後ろを振り向く。 無意識に視線の先を追うあたしたち。 「爽太、待ってるんじゃない?」 「……」 彼女の視線が捕らえていたモノは、爽太の席。その上に置かれたままになっているカバン。 「ほんとだ。ま、そりゃそうか。アイツが美湖一人でさせて帰るわけないよねー、」 「…」 今日、あたしと爽太は朝一で森ちゃんに呼ばれた。 智乃は何針も縫ったらしく、少なくとも今日は学校を休んで安静にしなきゃいけないらしかった。 一部始終を詳しく説明させられてから、もう理科準備室は掃除しなくていいと言われた。 すいません、と爽太がポツリと謝罪した。 自分が手伝いなんて断れば良かったと。オレのせいです。とシューズのつま先を睨みながらそう言っていた。 森ちゃんはおまえのせいじゃねえよばーかと言って爽太の頭をくしゃくしゃして珍しく笑顔を作ってた。 多分先生も責任を感じているんだと思う。それにショックだと思う。悲しいとも思う。 あたしは、 大丈夫なんですかっ! お見舞いにいかせてください! あたしのせいですすいません! なんて言えない立場なことが歯がゆかった。悲しかった。 ‘他人の出来事’のように聞いてなきゃいけないことが悲しかった。
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