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「じゃあほら、いっておいで」
ふいに夏芽のはずんだ声ぽんと降ってくる。
わざと明るく言ってくれてるのがわかる。
「ほら、今日こそ仲直りしてきなっ?」
「……ん、」
「てゆーかさっ、むしろ爽太と仲良くしてた方がその岩下さんもまた心開いてくれるかもよっ?」
夏芽の言葉にちらりと上目遣いで見やる。
「ほらあ、そもそも美湖が爽太変に避けだしてからでしょっ?岩下さんもなんか美湖を避けだしたの??」
「言われてみればそうかも知れないけど……」
「美湖が岩下さん気にして爽太避けたんなら、それでも今結局岩下さんは美湖を避けたまんまなんだから意味なくない?」
「…」
「だからもう気を遣って爽太を避ける必要なんてないじゃん。あとは美湖の気持ちの問題でしょ?」
つんと人差し指でおでこをさされる。
「美湖さえよければもういつだって爽太と仲直りしちゃえばいーんだよ」
……そうか、
確かに3割くらいは智乃の目を気にしてる部分はある。
大半は自分の気持ちの問題だけれど、結局すぐに、やっぱり爽太が居ないとやだってなっちゃう。
もうあたしは物理的に爽太無しじゃ居られないのかも知れない、なんて。
それにもし夏芽が言うように、智乃に避けられ出したのはあたしが爽太を避け始めてからなのだとすれば、つまり爽太を避けたことが原因なのならば、むしろあたしは爽太と仲直りする必要があるんじゃないか。
違うかも知れない。
本当はそうじゃないかも知れない。
だけどそう思いこんで仲直りの‘理由’にしてしまっても、キッカケにしてしまってもいいんじゃないだろうか。
どうせこのまま居たって現状は何もかわらないんだし、悪いままなんだし、どっちみち何か行動を起こさなきゃいけない。変えなきゃいけない。
あたしには、爽太と仲直りを‘しなきゃいけない’という状況が必要だった。
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