八つ当たり

18/21
前へ
/251ページ
次へ
ーーガラガラ‥ 理科準備室とは打って変わって今日の掃除場所は書庫。 とは名ばかりのただの物置。 まぁ書庫なんて呼ばれてるだけに置かれてあるモノは古くなった本や教科書類ばかりだけれど、、 「…美湖」 爽太は、無造作に積まれている教科書をイスにして何かの本を読んでいた。 あたしが来たことに気付いて顔をあげると、小さく綻ぶ。 「…来なくていいって言ったじゃん」 うっ ちがーう美湖っ、 またそんなこと、 そおじゃなくて、仲直り、 「だめだよ、美湖までケガしちゃいけねぇし」 「ここはガラスなんてないよ」 「何が起こるかわかんねぇし」 「…智乃大丈夫かな」 「かな、」 「心配だね」 「うん…。すげぇ」 ・・・。 瞼を、閉じた。 ・・・ツキン、 心臓が痛むの 爽太が心配して駆けつけるのも 爽太がその身体で支えるのも 爽太が心配を想うことも あたしだけがいいと そう想う そう想う醜さに 耐えられなくて 瞼を閉じたの。 ーーふ、 「ーーーっ?!」  ふいに、視界が暗くなった。 爽太の手のひらが、瞼に蓋をするようにあてがわれていた。 「……っ」 そのまま片腕は頭に回る。 ふんわりと、収まるか収まらないかのくらいで爽太の胸の中に抱かれた。 「ーーゃ、」 「嫌なら話さないのに」 「ーー……」  言葉の意図を探った。 「……なに、?」 「美湖が言うなら岩下の話題は出さねえ」 「え、何言ってるの、?」 分からないふりをした。 ほんとは探らなくてもわかってた。 「美湖の前で喋らないし関わらない」 どくん 「美湖の嫌がることはしないって、言ってるだろ。オレにとってお前が絶対だ」 「……………」 ・・・愛犬の爽太。 ペットはご主人の機微に敏感である。 優秀な爽太はついにあたしの不機嫌の理由を嗅ぎつけた。 ………あぁ爽太 愛しい爽太、 貴方はいつまで犬でいつづける どれだけ犬になりきれる あたしは 「……そんなこと」 あたしはどこまで 主人になりきろうとする? 「あたしが望むと思ってるのバカ犬」 「あぁ、思ってる」 滑稽だ
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

172人が本棚に入れています
本棚に追加