八つ当たり

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カタカタカタ。 風が窓を揺らしていた。 グラウンドで運動部の練習する声が微かに聞こえている。 「……そもそも爽太にそんなことできるのかな」 あたしは抑揚のない声でそう呟いた。 なんてわざと気持ちを押し鎮めてるだけ。 「出来るよ」 「出来ないよ爽太は頼ってくる子を突き放せない」 「出来る」 「出来ない爽太は弱い子を放っておけない」 「おけるよ」 「だれでも!」 ぐっ カッターシャツをグーで潰すように握りしめた。 その両手を強く前に押し出す。 「誰でもよ爽太は!あたしだからじゃないあたしだけじゃない!」 爽太が軽く目を見張る。 その眉間にほんの一瞬シワを作ってから、右手を頬にやった。それに噛みつきたい衝動にかられる。 「美湖だけだよ」 「ーーそれを判断するのは爽太じゃない」 「ー。」 怯んだ。 そうだ彼はいつも、自信満々だった。 あたしを呼ぶ声も あたしに触れる手も あたしを好きだと語るその言葉すら 自信に満ちあふれていたんだ。 彼はきっと、 あたしという少女に容易く触れることの出来る自分に溺れているに違いなかった。 「ーーーーとも、」 「?」 あたしには、怯んだ彼を見るといっきに止まらなくなる習性があるみたいだ。 「少なくともあたしはそうだよ、あたしは爽太だけじゃないよ、あたしはあたしを甘やかしてくれる人なら誰だって良い洋紀もよ!」 「ー、」 「そもそもあたしは陽介だけそうだよずっとよずっと陽介だけなの陽介以外に居ない陽介以外は甘やかしてくれる人ならみんな一緒ーー……」 ーーーーー・・あ、
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