あたしの愛犬

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それからあたしは、さり気なく口を開いた。 「…あたしたち、付き合ってないよ」 女の子たちの瞳が、僅かに膨らんだ。 顔を見合わせて、 また向き直って 「そうなの?」 ビックリしたような、ちょっぴり安心したようなその顔に、あたしはゆるりと微笑んだ。 「でもさ、すっごく仲良しだよね!有名だしさ!」 「そうだよ!ラブラブじゃん!」 「それは…」 「みーこっ!!」 不意に、背中から圧迫感。 ぎゅううって。 もう、慣れっこ。 「どぉしたの、爽太」 「50m新記録達成!!」 あたしの首に巻き付けてた腕を離して嬉しそうにピースを出すのは、可愛い子犬。 あたしを愛してやまない子犬。 「ほんとっ?すごいじゃん」 あたしもニッて笑ってピースを出す。 屈託ない。 人懐っこい。 太陽のような君のその笑顔が、あたしは好き。 「「上地君!!」」 急に大きな声で叫ばれビクッとする爽太。呼ばれた方に振り返る。 女の子2人が、真っ赤な顔で彼を見ていた。 「あっあのっ運動得意なんだね!」 「新記録おめでとうっ!」 りんごちゃんみたいな顔でほとんど喚くように言ったふたりに、爽太がキョトンとした顔を向ける。 そして、ああっと思い出したように言った。
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