あたしの愛犬

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「織田君ちょーカッコ良かったね!!」 「やばかったぁー!!」 不意に聞こえてきた黄色い声。 隣で夏芽がピクリと反応したのを感じる。 「飯島君の方がカッコよかったよぉー!!」 「確かにかっこいいけどあの人こわいじゃんーそれに比べて私の王子様は…!」 「織田君優しいもんねー!でも私はやっぱクールな陽介君派!」 「やだぁー陽介とか呼んじゃってー!」 「あんたも呼べばいいじゃん、洋紀って」 「はずかしぃー!!」 ……よくもまぁバカデカイ声で恥ずかしげもなく。 聞いてて呆れる。 「――あ、ちょ!」 「あっ……」 前方から歩いてくるあたしたちに気づいた女子たちが、慌てたように口をつぐんだ。 不自然なくらいに静まり返った集団の横を、無言で通る。 ・・・滑稽だ。 彼等と仲が良いだけで遠ざける連中だって、 逆に取り入ろうと必死こく連中だって 「ばぁっかみたい」 「…あはは」 夏芽のぶっきらぼうなセリフに笑みをこぼす。 ほんとバカみたいだよ。 「あいつらってそぉんなカッコいいかなぁ!」 「……んー」 別にね、いいの。 彼等がどんなにモテたってそんなの構わない。 じゃあ何が気に入らないかって。それはね。 みんな、“あたしたち自身”を見てくれないから。 解りやすく言うと、あたしは皆から『飯島美湖』としてじゃなく 『陽介の妹』 『洋紀と仲が良い子』 『爽太のお気に入りの子』 そう、認識されている。 それが哀しいだけなの。 もっと解りやすく言うと、 拗ねてるのっ(笑)
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