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「……聞こえる」
悲痛な声が
私を呼ぶ。
耳を塞いでも、
どこに居ても。
「莉波ちゃんっ!!!」
バンッと勢い良く開いたドア。
慌てて入って来たのは、驚きのあまり目を見開いているコムイだった。
「久しぶりだね、コムイさん」
にっこり微笑む少女、莉波。
コムイは床に散乱している資料の絨毯を踏みながら莉波に駆け寄った。
「…どうして君が此処にいる?
あそこの監視は厳しいはずだろう」
「行けって言われたの」
「まさか…中央庁に…?」
「そうだよ」
自分は何も聞いていない。
中央の奴らは自分に隠してこの子を教団に送り込んだのか…!?
コムイは唇を噛み締め、莉波の頭をぽんと撫でた。
「…ようこそ黒の教団へ。また会えて、嬉しいよ」
「…!私も!私も嬉しいっ!」
温かい手に撫でられながら、莉波はへにゃっと笑った。
ーーーもう後戻りは出来ない。
たとえ、残酷な運命が待っていたとしても。
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