嘘と告白のjuvenile

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 携帯電話のディスプレイには、件の彼女──柏木美羽の日記が映し出されている。以前、美羽から紹介されたSNSのものだ。彼女はよく利用しているらしく、毎日のように日記が更新されている。内容は他愛もない。学校の出来事であったり、遊びに出かけた話であったり、時々、僕が登場したりもする。  特に珍しくもない女子高生の日記だ。クラスのみんなもよく見ているらしい。  ただ、僕にとっては違う。内容そのものは何の変哲もないのだが、非常に不思議な現象が起こるのだ。美羽に紹介してもらった時は気付かなかった。だけど、クラスで日記の話題がでた時にその現象に気付いてしまった。  僕の携帯が、美羽の“明日の日記”を映していることに。 『なんか今日の幸太が変だった』  現象を確信するきっかけになった美羽の日記には、こんな文面があったことを覚えている。ちなみに幸太というのは僕のことだ。  その日記が更新された日、僕は特に奇行を行った覚えもなく、美羽に対して別段変わった態度をとったわけでもなかった。だから、日記を見たときには、物凄く不思議な気分に捕らわれたものだ。  果たして僕が何をしたというのか。そんな疑問がくるくると渦を巻いて、ろくに夜は眠ることもできなかった。  そして翌日、僕は美羽に問うたわけである。 「なあ美羽。昨日の僕、そんなに変だったか?」 「はい? どういうこと?」 「いや、だからさ──」  こんな感じで美羽との問答は妙に噛み合わなかった。僕が問えば美羽が眉を寄せ、美羽が問い返せば僕が言葉を重ねるというのの繰り返し。最後には「今日の幸太変だよ。何かあった?」と心配までされる始末。あれほど訳の分からない1日は、僕の人生で初めてだ。  ただ、これがきっかけで、次の日から何が起こっているのかが徐々に見えてきた。 「ねえ、幸太くんさ。美羽に昨日何したの?」  翌日の金曜日、クラスメートにそんなことを言われたのだ。聞けば、昨晩の美羽の日記に『今日の幸太が変だった』などと書かれていたという。しかし僕からしてみれば、それは一昨晩の記事なわけで……。  あれ?と。この出来事があって初めて、僕は違和感の尻尾を掴んだのである。  決定打が来たのはその夜で、これはいよいよ奇異な内容だった。美羽の日記によれば、彼女は昼間から買い物に出かけたのだという。これはおかしい。その日の昼は学校だ。
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