嘘と告白のjuvenile

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 ──4月1日 Aprilfool──  目覚めは最悪だった。いいわけがない。  寝起きにもう一度美羽の日記を見て、やはり記事が変わっていないことに僕は余計絶望した。同時にまだ生きているという事にも。あと寸刻と定められた生に、どれほどの希望があるんだろう。死んでいないことに安堵する程度だ。  ……はぁ。  携帯を手放すと同時、一つ、ため息を出す。深く、大きく。幸とか不幸とか、そういうのを全部追い出したくて。  でも、次に吸い込んだ時には、吐き出したものもそのまま戻ってきた。  ああ、こういう具合に肺の換気ができなくなって、内側から腐蝕していくのかな、なんて、一瞬思考した。莫迦げた考え。既に頭が腐ったのかもしれない。  ……はぁ。  ため息がもう一つ。  僕はベッドに寝転がったまま、言いようのない気だるさに捕らわれて、部屋の壁掛け時計を見た。時刻は10:17。  世間からすれば遅めの起床だろう。  春休みとはいえ、普通なら活動している時間帯。両親に朝餉を告げられるか、いつまで寝ているのだとどやされるかして。  父の赴任先について行った母と違い、生まれ育ったこの町での生活を選んだ僕には縁遠い苦悩だ。生まれ育った家での気ままな一人暮らし。自分で選んだこと。  でも今は、この状況が酷く寂しい。家に誰もいないということが、どうしようもなく不安に感じてしまう。  脳裏を巡るのは、今日という日に待ち受ける結末。  僕はどうなるのか。いつ、その時が訪れるのか。なんとか、逃れる方法は無いのか。等々。そんな暗澹たる思考が、僕を取り巻いていた。  運命のチャイムが鳴ったのは、結末の想像が品切れになった頃だった。  ポーンと、間抜けな調子の聞き慣れた音が、不意に家に響いたのだ。  僕は渋々と身を起こし、癖のついた頭のまま戸口へ向かった。      × × ×  鍵を開け、引き戸を滑らせれば、春の空気が室内に吹き込んだ。その先に来訪者の影。身に纏ったネイビーカラーのテーラードジャケットと、レース生地の奥にゼブラを透かしたボーダーTシャツがまず目に飛び込んだ。  伏し目だった視線を吊り上げれば、そこには見知った顔面。その鈴を張ったような目が、僕を捕らえていた。  目が合うと同時に「よっ。遊びに来た」と。軽やかな声と共に来訪者が片手をあげて御挨拶。いつもと変わらぬ様子の柏木美羽が、可愛らしい口元を綻ばせていた。
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