プロローグ

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『天樂街』と呼ばれるこの繁華街は、 とてつもなく多大な面積を有しており、栃木、茨城、群馬、埼玉の大部分を占めるつくりになっている。 東京ドームで表すと何個分になるのかは知るよしもないが、 比べるのも馬鹿になるような大きさだ。 端から端まで行くのには、自転車では躊躇いがおこるような距離がある。 街の端にあるのは、 人がとても超えることの出来ないような大きな壁と、 これまたなんのために造られたのかが分かりかねるような大きな扉がそびえ立っていた。 月初めしか開かないその扉からは多くの者が入り、 それに反比例するようにごくわずかな者しか出て行くことはない。 その事を考えると、 この街の人口は増加をたどる事しかないはずなのだが、 実際には過疎といっても間違いではないくらい人口密度は低い。 その理由は簡単だ。 多くの者は出ることも無くこの街の中で息絶える。 いや、殺されると言ったほうが成仏した人たちの面目を果たせるか。 閉鎖されたこの街では、毎日、命の賭けが行われている。 人生の負け組しか入居を認められない天国。 いや、地獄。 そう呼ばれているこの街には多くの者が訪れ、 毎日殺し合いが行われているのだった。
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