第一章

2/17

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
部屋の中には年老いた老人が一人 いや、一体と言ったほうが文学的に正しいか。 年は50歳くらいだろう。 だらけた体型と、薄く混じった白髪がそれ相応の容姿に仕立て上げている。 うつぶせに倒れているせいでそれの顔は伺えないが、 少なくとも非行にあけくれ、白髪に髪を染めた少年ではないだろう。 そしてもう一人。 床に直立姿勢のままガンつけていると捕らえることも出来なくもない者の隣には、 その者を見下ろすように一人の少年が立っていた。 少年が見つめている視線の先にあるのは、 過去の偉人が書かれた紙切れ、 つまり、お金。 少年が見下ろしている紙幣は男の下敷きになっていて、 見方を変えれば抱きかかえているようにも見える。 そんな紙幣には見向きもせず、少年は部屋の中を物色し始めた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加