6/6
前へ
/22ページ
次へ
次の日、楽俊は雁へと戻って行った。 送ると言ったが、お前にはやる事があるだろと言われ、仕方なく諦めた。 「楽俊が次に来る時には、もう少しマシになってる様に努力する。」 そう言った陽子の目には決意が宿っていた。 「うん、オイラも頑張って大学を卒業しねぇとな?」 名残惜しかった。 離れたくなかった。 甘えてしまいたい気持ちがある。 けれども自分には、楽俊には成すべき事がある。 「必ず、また来てくれ。」 「あぁ、それじゃ、行くな?」 小さくなる後ろ姿を見ていると、どうしても衝動を押さえられなかった。 「楽俊!」 気付いた時には、その後ろ姿に抱き付いてた。 ふわふわした毛皮の感触 「うわわわ!?」 うろたえた声が腕の中から聞こえる。 「陽子、お前、本当にもう少し慎みをもてって…な?」 「うん…楽俊、温かいな…」 楽俊は何も言わず、そのままでいてくれた。 「ごめん、なんか…」 心なし、陽子の顔が赤い。 「じゃあ、頑張れよ?」と短い言葉を残して、今度こそ行ってしまった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加