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次の日、楽俊は雁へと戻って行った。
送ると言ったが、お前にはやる事があるだろと言われ、仕方なく諦めた。
「楽俊が次に来る時には、もう少しマシになってる様に努力する。」
そう言った陽子の目には決意が宿っていた。
「うん、オイラも頑張って大学を卒業しねぇとな?」
名残惜しかった。
離れたくなかった。
甘えてしまいたい気持ちがある。
けれども自分には、楽俊には成すべき事がある。
「必ず、また来てくれ。」
「あぁ、それじゃ、行くな?」
小さくなる後ろ姿を見ていると、どうしても衝動を押さえられなかった。
「楽俊!」
気付いた時には、その後ろ姿に抱き付いてた。
ふわふわした毛皮の感触
「うわわわ!?」
うろたえた声が腕の中から聞こえる。
「陽子、お前、本当にもう少し慎みをもてって…な?」
「うん…楽俊、温かいな…」
楽俊は何も言わず、そのままでいてくれた。
「ごめん、なんか…」
心なし、陽子の顔が赤い。
「じゃあ、頑張れよ?」と短い言葉を残して、今度こそ行ってしまった。
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