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国境から一日半程歩いた所にある小さな盧に立ち寄った彼は、そこで朱旌に出会った。
出し物が終わった後だったらしく、天幕から人が出て来始めた。
人込みに混じって、水飴を売っている女の子も出て来た。
「水飴かぁ…ちょっくら食べてみるかぁ。」
「いらっしゃい、ほら、こんな水飴どう?」
無邪気に笑う女の子が差し出したのは、鼠の形に細工した飴だった。
「へぇ、大したもんだなぁ?じゃあ、それを一つ貰うかな?」
「うん、お兄ちゃんはこの辺の人?」
「いんや?オイラは元々巧にいたんだが、今は雁の首都の関弓から来たんだ。色んな事を見て、知りたくて来ちまったい。」
女の子の名前は玉葉と言って、母親と二人でこの朱旌に混じって旅をしているのだそうだ。
以前、慶国に縁のある海客と旅をしていた事があるそうで、それで毎年必ず一度は慶国を巡業する様になったのだそうだ。
「前はね、妖魔がいたからあまり来れなかったんだけど、王が起たれたから、安心して回れるの!」
「そうだな、これで慶国も安心出来るな。」
「うん、陽…今の景王様なら大丈夫よ!あ、そろそろ行かなきゃ!お兄ちゃん、元気でね~?」
盧の中を一回りしたが、誰の表情も明るい。
王に対しての信頼がある証拠に思えて、彼も自然嬉しくなってしまった。
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