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慶東国首都、堯天にある王城を金波宮という。
金波宮には数多くの四阿やら庭園などがあるのだが、その賑やかな一角の奥にこれといって見るものの無い場所があった。
そこに、一人の少女が佇んでいる。
「主上、そこにおられたのですね?」
呼ばれた少女の名は陽子という。
この慶東国の王だ。
陽子が振り向くと、彼女の僕が立っていた。
「なんだ、景麒?」
「いえ、祥瓊が至急禁門まできて欲しいと探していたものですから。」
「祥瓊が?なんだろう?にしても、よくここが分かったな?」
いつもは能面の様な顔の彼が、少しだけ、ほほ笑んだ。
「私には、主上がどちらにいらしても分かりますから。」
流石に少し恥ずかしかったのか、祥瓊の用件は伝えましたと足速に去ってしまった僕を、陽子もまた少し照れながら見送った。
来た道を戻り、禁門まであと少しという所まで来て、祥瓊に会えた。
「あぁ、祥瓊、探してたみたいだけどなんかあったのか?」
「あっ、陽子!やっと会えた!」
ごめんと謝ると、慌ただしく禁門まで引っ張って行かれた。
「あれ?虎嘯じゃないか、こんな所で何してるんだ?」
陽子がそう言うと、虎嘯と祥瓊の両者から大きな溜め息が出た。
「主上の警護が俺の仕事の筈だったんだが、その主上が午前中から行方不明でなぁ?探してたら台輔がきて、ここで待てば現れるとおっしゃったから待ってたんだ。」
「私は陽子に用事があって探してたんだけど、見つからないから途方に暮れてたら、台輔が探してくれるって言うから、あそこで待ってたのよ。」
二人に言われると流石に申し訳ない気がする陽子だった。
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