三章:変わりゆく

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   随分簡単に頷いたものだ。色々と気にしていたのに。   「マスター。少し休みを貰っても大丈夫かな?」    あまつでさえレユリは、フェリンにそんなことを聞く。    レユリが休んだら料理が出せなくなるし、断られるのは目に見えてるのに。もしレユリがいなくなったら、喫茶店は大変なことになる。   「いい、わよ」    と私は考えていたが、フェリンは二つ返事でその要請を受け入れた。    ――もうフェリンがマスターなだけで、大変なことになってる気が。   「喫茶店はどうするんですか?」    当然の疑問をアルネは口にする。すると二人は肩を竦めてみせた。   「マスターは適当だし、今までも結構あるし」 「常連さん、は……分かってくれ、る」    混沌とした喫茶店だ。まあフェリンがいるなら飲み物は出せるし、喫茶店と名乗っても大丈夫そうだけど。かろうじて。   「というわけ、で。しばらく……飲み物だけ、で商売するわ」   「本当、よく潰れないわね」    そう言って、ココアを一口。今朝食べた物も美味しかったし、今飲んでいるココアも相当美味しい。この喫茶店、雰囲気だけでなく味も確かなものだ。    表面上呆れたことを言いながらも、頭では中々潰れないだろうと認めていた。    それは常連らしき人達も同じなのか、やれやれといった感じで肩を竦めているが、文句は一つも言わない。  
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