最悪な日

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「くっ、卑怯者っ!」 私が睨むと、上原くんは笑った。 「ははっ、きっつい顔もいいなあ。綾瀬さん、何も四六時中ペットになれって言っているわけじゃない」 「え?どういう意味?」 「ペットの時はペット。仕事の時は先輩後輩で。みっちり指導してよ」 「そ、そんな器用な真似できないわよ」 「やるんだよ、ショーコ」 ぞくっときた。 上原くんの目をみると、そうしなきゃいけない気がした。 「わ、わかったわ」 「ふふ、いい子だね」 上原くんはそう言って、私の顎を掴む。 「やだ……」 顔を背けると、上原くんが耳元で囁く。 「……かわいくないな。バラすよ?」 「あ……」 仕方なくキスに応じる。 むかつくことに、彼は上手だ。 とろけるようなキス。 深く、深く。 私を疼かせる。 「ねえ、ショーコ。もう一回しよ?」 その日、会社に入って初めて髪を巻かなかった。 化粧もマスカラの二度塗りをしていない。 朝はギリギリ。 お弁当ももちろんない。 「綾瀬さん、おはようございます」 諸悪の根源登場。 キッと睨むと、眼鏡の彼はこう囁く。 「言い付け守らないとお仕置きするよ、ショーコ」 .
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