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上原くんに脅されて数日。
特に何もなかった。
当の本人は従順な後輩をを通しており、一人でビクついている自分が恥ずかしい。
あの晩が嘘のように思えた。
嘘だったの?なんて聞くことはしない。いや、できない。
ある日、橘くんのOJTが吉野美香だと知った。
イラッとした。
彼は飲み込みがよく、期待度ナンバーワンと噂されていた。
また彼女がいい思いをする。
なんで、私が面倒をみるのはあの男なんだろう。
神様は不公平だ。
吉野美香に負けてたまるか。
私は上原くんに対してスパルタで教育した。
「上原くん、このデータまとめて。18時に確認するからそれまでにお願い」
「はい、綾瀬さん」
彼は従順に嫌な顔をせず、仕事をした。
「綾瀬さん、新人は早めに帰さなきゃだめだよ。ほら、アプリの新人達は皆定時であがって…」
「わかってます!」
チーフの一言に噛み付くと、すごすごと逃げていった。
わかってる、本当は。
でもやめることができない。
やめたら、吉野美香に負けちゃう。
「綾瀬さん、できました」
上原くんは18時ぴったりに声をかけてきた。
彼のまとめ方は表をうまく使っていて、とてもわかりやすかった。
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