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「あ、わかりやすい」
思わず声に出してしまった。
しまった。予想外だ。
一年目で、しかも入ってきたばかりでこの出来は文句ない。
それでも、先輩らしさをアピールしたくて。
いやらしいくらいチェックする。
「ここ!文字が切れてる!」
「あ、すみません」
必死に探しても、それくらいしかみつからなかった。
「……上原くん、結構やるのね」
「いえ、100点満点が欲しくて何度もチェックしたんですけど…残念です」
しょんぼり。
そんな言葉がやけに似合った。
本当に、あの威圧的な態度を取った男とは思えないほど。
「ぷっ、そんなに小さくならなくても」
「仕事はしっかりやりたいタイプなんです」
胸を張る彼。
おー、言うじゃない。
「そんなこと言う余裕があるんだね」
私はにやっと笑った。
「まだまだ俺は平気ですよ」
上原くんも笑う。
「わかった、明日を楽しみにしておいて。やりがいのある仕事お願いするから。さ、今日はもう帰って平気よ。お疲れ様」
「え、綾瀬さんは?」
「今日は夜間作業なの」
アプリチームから依頼されている作業をやらなければいけない。
「では、お先に失礼します」
上原くんは会釈して帰っていった。
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