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「綾瀬、そろそろ行こうか」
「はい、日比谷さん」
作業に必要なものを手に持ち、テストルームに行く。
「綾瀬とペアになるの、久しぶりだなあ」
優しげな笑み。
日比谷さんは私の2つ上の先輩。
仕事ができ、配下のメンバーに気遣いもできる私の憧れの先輩だ。
カツカツ
階段を上がる。
「そんなに高いヒールで痛くないかい?」
「ふふ、実はちょっと痛いです」
彼にはつまらない意地を張らないで話ができる。
「さ、サクッと終わらせて帰ろうか」
「もちろんです」
あらかじめ作っておいたプログラムを起動する。
ファイルをコピーする時間は待ち時間。
日比谷さんとの会話を楽しむ。
「新人、どう?結構厳しく教育しているって聞いたけど」
ドキッ
私のスパルタぶりが日比谷さんまで伝わっている。
「結構できる子ですよ。やっぱりエクセル使える子はいいですね。質問もその分減りますし」
「お、今年の新人はエクセルマスターか」
日比谷さんは嬉しそうにする。
「でもな、平気だ、と思っていてもいつのまにかこなくなるのが現代人だから。最初から飛ばすのはよくないと、俺は思うぞ」
「……はい」
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