二重生活

5/24
前へ
/357ページ
次へ
「綾瀬、そろそろ行こうか」 「はい、日比谷さん」 作業に必要なものを手に持ち、テストルームに行く。 「綾瀬とペアになるの、久しぶりだなあ」 優しげな笑み。 日比谷さんは私の2つ上の先輩。 仕事ができ、配下のメンバーに気遣いもできる私の憧れの先輩だ。 カツカツ 階段を上がる。 「そんなに高いヒールで痛くないかい?」 「ふふ、実はちょっと痛いです」 彼にはつまらない意地を張らないで話ができる。 「さ、サクッと終わらせて帰ろうか」 「もちろんです」 あらかじめ作っておいたプログラムを起動する。 ファイルをコピーする時間は待ち時間。 日比谷さんとの会話を楽しむ。 「新人、どう?結構厳しく教育しているって聞いたけど」 ドキッ 私のスパルタぶりが日比谷さんまで伝わっている。 「結構できる子ですよ。やっぱりエクセル使える子はいいですね。質問もその分減りますし」 「お、今年の新人はエクセルマスターか」 日比谷さんは嬉しそうにする。 「でもな、平気だ、と思っていてもいつのまにかこなくなるのが現代人だから。最初から飛ばすのはよくないと、俺は思うぞ」 「……はい」 .
/357ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5232人が本棚に入れています
本棚に追加