5241人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、ショーコ。来週温泉行こうよ」
ニマニマと笑う彼に、私は呆れた。
「急すぎるわよ。第一予約とかもあるでしょ?」
私は物事は計画的に進めないと嫌なのだ。
「もう、予約はとってあるよ」
「……えっ」
私のパソコンのスイッチを押す。
ブラウザを立ち上げて、手慣れた感じで旅館のホームページを開いた。
「試験のご褒美に、いいでしょ?」
にやりと笑う顔。
遊園地の時といい、海の時といい、彼は用意周到だ。
「私が行かないって言ったらどうするつもりだったの?」
少し格式だった旅館で、安くないのはわかる。
土日なら予約をとるにはだいぶ前じゃないと無理な気がした。
「ショーコは来てくれると思ったから」
にっこり笑う彼。
……確かに行くけれど。
ふうっと息を吐くが、少し心は浮かれていた。
「ここ、堺さんに教えてもらったんだ」
……また、堺くんの名前。
「なんで急に仲良くなってるの?」
私はこの前聞きそびれたので、次こそは、と意気込む。
「資格や勉強方法を聞きに行ったら、ウマがあっちゃって。今日も一緒に受けに行ったよ。堺さんは高度情報のなんかを受けてたけど」
.
最初のコメントを投稿しよう!