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「ふぅーー」
浴場は広く、種類も多かった。
塩竈サウナに入り、ぼーっとする。
どうしよう、上原くんのことがすごくすきだ。
キスマークをなぞる。
捨てられたくない、と思う私は、まだ彼を信じ切れていない証拠だった。
会社では素顔を隠しているのに、人気は上々だ。
ユーモアがあり、人懐っこく、礼儀正しい。仕事もできる。
それだけあれば、おつりが返ってくるくらいなのに、気遣いもできる。
私にだけそうであればいいのに。
そしたら、誰かにとられる心配なんてしなくていいのに。
時間が経つにつれ、体に塩がついてきた。
サウナからでて、水で体を洗い流す。
ヨヨも、そうだったな。
私は同じような二人をすきになったのか。
いつも私がすきになるのは、太陽みたいなひとだ。
私とは正反対。だから、信じることができない。
薬用風呂に入り、普段の肩の凝りを揉む。
「私って、性悪」
思わず呟いてしまった。
誰も聞いていなかったけど、妙に恥ずかしくて。
慌てて脱衣所に駆け込んだ。
――――
待ち合わせ場所にはまだ上原くんはいなかった。
ちょうどマッサージチェアがあいていたので、座ることにした。
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