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「あ、いやあっ」
急いで開き気味だった襟を正す。
「俺、風呂いくから」
堺くんは表情を変えず、男湯の暖簾をくぐった。
「ショーコ、俺達も飯の時間あるからいこうよ」
差し出された手を怖ず怖ずと受け取った。
「ショーちゃん、その……泊まりだよね?」
やけに小さくみえる葵くんに、上原くんはにっこり笑った。
「泊まりです。俺の我儘できてもらったんですけど」
「ね?」と言われ、慌てて頷く。
「あ、そー……なんだ。彼氏なの?」
葵くんの弱々しい声に対して、上原くんはハッキリ言った。
「彼氏です」
私はその言葉に驚いた。
何を言ってるの!?
口をパクパクするが、彼は口に人差し指をあてて、ウィンクをした。
「ぱっと見、気が強いんですが本当は弱いんですよ。そこが愛おしくて、守ってあげたくて、無理矢理恋人にしてもらいました」
上原くんの言葉がくすぐったく感じた。
それと同時に、愛されてる、と実感した。
「あ、俺も風呂……じゃあね、ショーちゃん」
葵くんは口を押さえ、男湯の暖簾をくぐった。
「なに、ショーコ。目がとろんっとしてるよ。誘ってるの?」
私は頬の火照りを感じた。
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