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「上原くん。私と葵くんがなんでもない、って誤解を解かないといけないひとがいるの。だから……この後、葵くん達のお部屋にいってもいいかな」
「……吉野さん?」
私が頷くと、上原くんは困った顔をした。
「……葵さんは本当、気の毒な人だなあ」
言葉の意味はわからないけれど、お風呂に入ったら話そう、と心に決めた。
葵くんには元気でいてほしい。
吉野美香と話さなきゃいけないのは、本当やだけど。
貸切露天はいくつかあって、そのうちの一つを鍵で開けた。
裸になり、タオルで体を隠す。
扉をあけると、紅葉がライトアップされていた。
「まだ少し早かったね」
「うん、でも綺麗だわ。いつも素敵なとこに連れていってくれてありがとう」
私の言葉を気をよくして、彼は後ろから抱きついてきた。
「しあわせ」
耳元で囁かれる言葉がくすぐったい。
肩をピクッと震わせると、耳たぶを甘噛みされた。
「こっち向いて?」
顎に手をあてられ、やさしいキス。
だんだん激しくなっていき、息が荒くなってきた。
「ん……あっ」
…
…
私と上原くんは顔を見比べた。
思わず、私はブンブンと首を振る。
「俺達よりお盛んなカップルがいるみたいだね」
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