二重生活

9/24
前へ
/357ページ
次へ
上原くんは10分前出勤だ。 「おはようございます、綾瀬さん」 彼は私にだけ、名指しで挨拶してくる。 仕方がないので、「おはよう」と言う。 「今日はこれをお願い」 日比谷さんに言われた通り、普通にやれば定時に上がれる仕事をお願いした。 「え、今日はこれだけですか?」 上原くんは少し不服そうだった。 「確認は一旦、15時にしましょうか」 定時内で仕事を終わらせるスケジューリング。 昨日までとは違う。 チーフが嬉しそうにしてるのが横目でわかる。 「……わかりました」 上原くんは頷いて席に戻った。 これでいいんだ。 日比谷さんがポンと肩を叩いた。 「綾瀬、グッジョブ」 私は嬉しくなって、親指をたてて応える。 上原くんがそれを見ているなんて思ってもいなかった。 … … 15時。 上原くんの作成した研修用のプログラムをみる。 100点満点だ。 所々、余裕があるようでコメントまで丁寧に書いてある。 「もしかして、プログラム経験者?」 「はい。大学でC言語の授業受けていたんで」 そんなこと、自己紹介の時に言ってなかったじゃない! .
/357ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5230人が本棚に入れています
本棚に追加