二重生活

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金曜の朝。 一週間のうち、一番人がいない朝。 私はいつものように煙草を吸いにいく。 堺くんはすでにきていて、作業をしている。 ……何でそんなに頑張れるんだろう。 煙を吐いて、火を消す。 あまり長居すると、葵くんに捕まってしまう。 カチャ ……え。 「おはようございます、綾瀬さん」 時計をみる。 まだ、8時ちょっと過ぎ。 「ねえ、綾瀬さん。ちょっときてもらえますか?」 喫煙所なのに、彼は煙草を吸わないで私の手を引く。 「ちょ、ちょっと、やめて!!」 こんなところ見られたら一気に噂になる。 「ふーん。ショーコ、俺に命令するんだ」 ビクッ 「あ……」 「へえ……俺、バラしてもいいってこと?」 上原くんはにやっと笑った。 「ひどいっ!」 彼に連れられてきたのは、資料室だった。 今まで作成した設計書が眠っている。 人がくることはめったにない。 「ショーコ、なんで急に態度変えたの」 昨日のことだ。 「変えてないわ」 上原くんは私の顎に手をあて、指を頬に食い込ませた。 「嘘つくんだ、ペットのくせに」 .
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