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事が終わった。
強姦、だと思う。
だけど、彼は甘い言葉とテクニックで私を陥落させた。
今も、まるで恋人のように私の頬を撫でている。
「あんたは、俺には素直に振る舞えばいいんだ」
「え?」
「自分のしたいこと我慢するなよ」
「なんのこと言ってるの?」
彼の指先がぴたっと止まる。
「ショーコのスパルタ研修スケジュール、俺みちゃったんだよね」
日比谷さんに止められなければ実施していたスケジュール。
吉野美香に負けるか、と思って色々考えた奴。
短期的に一通りの知識が身につくように、会社でも家でも悩んだ。
「確かに普通の新人じゃダウンするかもしれないけど。俺は平気だよ」
上原くんはニカッと笑った。
「で、でも、人からみると私がいじめてるって思われちゃう……」
ポツリ、ポツリ。
私を弄ぶひどい男に、誰にも言えない思いをひとつひとつ吐露していく。
上原くんは何も言わず、ずっと聞いていた。
一通り話すと、彼は口を開いた。
「ショーコは、どうしたい?」
「私?」
「そう。俺のこと、他の新人と足並みそろえたい?」
「そんな!上原くんには早く一人前になってほしいわ!」
クスッ
「じゃあ、決まり」
上原くんが眼鏡をつけた。
「今日もよろしくお願いしますね、綾瀬さん」
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