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どんなに辛くても朝はくる。
泣き腫らした目を冷やした後、誤魔化すように化粧をする。
通勤中も会社に着いた後も、気が付くと別れた男の言葉が頭の中をぐるぐるして。
精神状態がやばいのを自覚した。
このままでは仕事にならない。
……よし、一服しよう。
タバコセットを手に、急いで喫煙所にいく。
朝の早い時間は私一人独占できる、癒しの場。
少し、落ち着こう。
…
…
はあ。
思わず大きな溜息がでてしまう。
今日に限って、男共がヘラヘラと笑いながら会話をしていたからだ。
「吉野美香、やっぱかわいいよなー」
「わかる、笑顔がやばいっ」
私は喫煙所のドアに手をかける前にくるりと踵を返した。
吉野美香は私の同期。
彼女はとても評判がよい。
夜遅くまで頑張って仕事をしている頑張り屋さんで。
見目もナチュラルメイクだというのに可愛い、と。
私からすると、化粧をサボり仕事が遅い女にしかみえなかった。
彼女は朝はギリギリに出社して、髪もボサボサ。
私は皆に過大評価されている吉野美香を嫌っていた。
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