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パタン
資料室のドアが閉じる音。
私は服装を整えて、化粧室に向かった。
ひどい顔だ。
涙でぐしゃぐしゃ。マスカラが落ちて、睫毛のカールがとれている。
しっとりと感じる下半身。さすがの私も下着の予備はない。
気持ち悪いが、そのままにするしかなかった。
…
…
ひどいことをされたというのに。
不思議と、少し心がすっきりしていた。
不満を吐き出したからかもしれない。
私は急いで自席に戻り、カバンから化粧ポーチを取り出した。
急げ、急げ。始業まで後もう少し。
せめてマスカラだけでもきれいにしたい。
「ショーちゃん?」
葵くんが声をかけてきたが、無視をする。
はやく、はやくしないと、皆にこの顔をみられちゃう。
「ショーちゃん!その顔…誰にやられたの?」
「は、離して!」
パシッ
つかまれた手を振り払う。
はっとした。
葵くんの傷ついた顔。
「ごめん!」
私はそのまま小走りで、化粧
室に飛び込んだ。
幸い誰もいなかった。
急いで目元の化粧をやり直す。
グロスを引き、化粧室をでると同時にバタバタと走る音。
「おはよっ、綾瀬さん!」
「吉野さん…おはよう」
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