二重生活

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彼女を見ると無条件でむかついてくる。 負けない、吉野美香になんか負けない。 日比谷さんに言おう。 私はやっぱり自分のペースで教育したいって。 ギュッとハンカチを握り締めた。 席に戻り、本当なら9時前に終わっているメールチェックをする。 今日も依頼業務が多い。 ポン 肩を叩かれる。 「綾瀬、ちょっといい?」 日比谷さんだ。私は頷いてついていく。 「上原の教育のことなんだけどさ」 き、きた。 「あの、私、やっぱり……」 「上原、綾瀬の仕事じゃ物足りねえって俺に言ってきた」 「え?」 日比谷さんが笑った。 「綾瀬、おまえのすきなようにやってみな。みててやるから。ただし、研修スケジュールは俺にみせること」 「はい!」 「チーフには俺から言っといてやる。頑張れよ」 とんとんと事が進んでいく。 席に戻って、研修スケジュールをみる。 よし、今日はアプリからの依頼業務をやろう。 「上原くん!今日は定時にあがれないけどいい?」 チーフがぎょっとしている。 上原くんは笑った。 「ええ、望むところです!」 私もつられて笑った。 「ビシビシいくから!」 .
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