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作業を一つずつ教える。
彼は考えながら、丁寧にやっていく。
スピードではなく、確実に。
好感のもてる仕事の仕方。
私も焦らず、作業の度にわからないことがないか確認していった。
「お疲れ様」
宣言通り、定時は軽く越えて20時。
「平気?一気に詰め込んじゃったから……」
上原くんはニヤッと笑った。
「平気です。マル秘ノートも作りましたし」
私の言った注意は、癖のある字でびっちりと書かれている。
「むしろ、覚えが悪くて申し訳ないです」
「そんなことない。スピードよりも確実にこなすことが大切よ」
その言葉を口にして、ハッとする。
あれ、なんか昔、このやりとりしたような……。
記憶が霞みがかっていて、思い出せない。
「綾瀬さん、この後どうするんですか」
「え?帰るだけだけど」
それ以外、何があるというの?
そう思っていると、上原くんが耳元で囁いた。
「うち、こない?」
「えっ?」
「ショーコは俺のペットでしょ。逆らわないよね?」
さっきまでの従順ぶりが嘘のようだ。
「…わかったわ。でも……」
「でも?」
「下着が……」
汚れちゃってるし。
…
…
上原くんはクスッと笑った。
「へえ、抱いてほしいんだ?」
「え、そういう意味で誘ったんじゃないの!?」
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