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「はははっ。本当、ショーコって天然」
上原くんは笑った。
私は何がツボに入ったかわからなかった。
「俺、駅で待ってるから。こなかったらわかるよね?」
「わ、わかったわ」
二人で自席に戻る。
上原くんは今日の作業記録を書き、帰りの支度をした。
「お先に失礼します!」
…
…
……そろそろ、私も行かないと。
何をされるのかはわからない。
それでも私は彼のところに行かねばいけなかった。
「お先に失礼します」
金曜の夜。
残っているメンバーに声をかける。
「……ショーちゃん」
葵くんに捕まった。
「朝、何があったの?」
「……何もないから」
本当のことを言ったら、写真がばらまかれる。
「本当?」
「本当。目にゴミが入っただけよ」
葵くんは、はぁっとため息を吐いた。
「俺に言えないことなんだね」
私は小さく「ごめん」と謝り早歩きで去った。
…
…
……葵くんの不機嫌の顔。はじめてみた。
私は駅までの間、葵くんのことばかり考えていた。
「……ショーコ、通り過ぎてる」
振り向くと、眼鏡の男。
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