5242人が本棚に入れています
本棚に追加
私は朝早く起きて、髪をきちんと巻いて、化粧もしっかりして。
アイロンをかけたブラウスにタイトスカート。
毎日手入れを入れたクロエのバッグを片手にヒールの高い靴で毎日一時間前に出社しているのに。
皆、私に話し掛けにこない。
はあ。
再び溜息を吐くと、背中を叩かれた。
「おはよ~ショーちゃん♪」
「おはよう、葵くん」
そんな私を自分から話し掛けてくるのは同期の葵くん。
彼も朝がはやい。
会社に着くなり、彼はいつものようにスーツのポケットをまさぐる。
「ショーちゃん、火貸して」
「また忘れたの?」
ライターを渡すと、葵くんは笑った。
「サンキュッ。あ、ショーちゃんさ、今日くる新人の顔みた?」
言われて気が付いた。
今日は新人研修を終えた一年目が配属される日だった。
「みてない。興味ないし」
仕事をはやく辞めたいから、特に自分から知りたいとは思わなかった。
「ショーちゃん、OJTするんだから少しは興味もとうよ」
「いーじゃない、別に」
葵くんは苦笑いして喫煙所に行った。
……ほんと、どうでもいいわ。
後輩なんて。
.
最初のコメントを投稿しよう!