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「上原くん、この人が綾瀬さん。彼女が君に仕事を教えてくれる先輩だよ」
一通り新人の紹介が終わった後、自席に戻るとチーフが上原くんに私を紹介してくれた。
「上原湊太です。綾瀬尚子さんですよね?これからよろしくお願いします」
「はじめまして、三年目の綾瀬です……って、私の名前よく読めたわね。しょうこって」
なおこ、と書いてしょうこ。
高橋尚子が一躍時の人になってから、自分の名前を最初から読めたひとに出会ったことがない。
「なんでだと思いますか?」
意味深な目。
だけど、無視をする。
そもそもどこで名前を知りえたかわからない。
どうせどこかの資料にフリガナでもふってあったに違いない。
「さ、これから仕事をするための設定をするわよ」
上原くんは「は、はい」と言って、教えた通りにメールの設定、プリンタの設定をしていく。
「上原くん、エクセル使える?」
「はい」
「これと同じようにまとめて」
サンプルとデータをメールで送信する。
「わかりました」
上原くんはにっこり笑って、初日なのにも関わらず頑張ってくれた。
まあ、見た目は悪いけど、いい後輩が入ったな。
この時の私はそう思った。
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