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彼と出会って二ヵ月。
上原くんといると私の心は安定していた。
煙草を吸わなくても、彼のキスがあるから。
アプリチームからの作業依頼も、チーフからの仕事依頼も、イラつかないでこなすことができた。
「尚子、久しぶり~」
「奈緒も元気してた?」
私は違う部署にいる、外販の奈緒と久しぶりに会った。
同期の中で一番彼女とは馬が合う。
たくさん、合コンにも行った。
お互い早く結婚したいね、と言い合った。
彼女は見事、高学歴・高収入の年上の旦那様をゲットした。
「尚子、三田さんとはどう?」
三田さんとは、私の元彼だ。
最近では思い出すこともなかった。
あんなに結婚したかったのに。
「別れた。ふられちゃった」
「え?うそー、あんなに結婚したがってたのに」
彼女は煙草に火を点けた。
「新しい恋みつけた?」
……恋。
ふっと浮かんだものを慌てて消す。
彼に対しての想いは恋じゃないから。
「ううん、全然。別れてから出会いすらないよ」
「へぇ、でも尚子さ。今、あんた輝いてるよ。肌も綺麗だし。前は痩せすぎだったけど、今は女らしい体型っていうか」
奈緒は煙を吐きながら、笑った。
「別れたのに、綺麗になるのってなんかあるんじゃない?」
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