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じっと瞳をのぞかれる。
「つ、次の人の為に頑張って綺麗になろうかなって!」
「そう?なんか、色っぽくなってるし、いいセックスしてるんじゃないかって思っちゃった」
さすが、奈緒。
直球だ。
今は、上原くんとしかしていない。
奈緒に年下で後輩、しかも脅迫する男とシてるなんて言えやしない。
「な、何を言ってるの!?」
「違うの?ふーん……尚子は結構隠すからなー三田さんの時も事後報告だったし」
彼女は笑みを浮かべた。
そして頬杖をつき、無言のプレッシャーを与えてくる。
「な、奈緒は最近どう?」
なんとかして話を逸らしたい私は、彼女の話を聞くことにした。
すると、にやついていた表情が急に無表情になる。
「えー、私?……幸せよ、たぶん。でも、なんか、物足りない」
「な、なに?」
「結婚を目的に生きてきたから、なんか、今どうしていいかわからないの」
彼女は笑いながら言うが、目が笑っていない。
奈緒、本気でそう思ってるんだ。
私はかけるべき言葉が浮かばず、しばらく口を閉じた。
「……奈緒。私、今さ、彼氏いなくて超さみしいの。だから、いつでもいいから遊んで」
彼女の生活には口だせないけれど、愚痴ならいくらでも聞くことはできる。
それくらいしかできないけど、頼ってほしい。
「……ありがと。尚子、なんか変わったね。前はそんなこと言わなかったのに」
彼女はフフ、と、笑いながら私の背中に手を回した。
「ありがとう、尚子」
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