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柿崎がそう言って先に進む道はここから桜並木へ行く近道だった。近道といっても、ちゃんとした道があるわけでもなく、無人の家の庭を突っ切っていくのだ。
これは柿崎が偶然見つけたのだが、ここから桜並木の場所までほぼ一直線で無人の家――売り地――になっているのだ。だから、俺たちだけの道だ。
そうこういっているうちに、ラスト一軒まできた。
「あれ、誰かいるよ?」
「まじかよ。ダッシュで行くか。弥(わたる)、いいか?」
「もちろん。いつでもいける」
最後の家に出る前に一度靴紐を結び直し、柿崎の合図とともに垣根の間を抜け、庭を走り抜ける。
走り抜けると、そこは桜並木の通り沿いの小さな広場に出る。
多くの人がいるが、自分たちを気にして、咎めようとする人はいなかった。
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