飼育とまりも

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3日後の訪問で、準備しておいた籐のバスケットを後ろ手で隠しながら澤木家の子供部屋をぎこちない格好で開けた。 迷ともっと仲良くなるための作戦。 問題点を改善する狙いもある。 ミッションを果たすため籐籠の中でスタンバイするまりも。 部屋の中央に設えられたガラスのテーブルの上に籐籠を置くと、引き寄せられるように迷もテーブルにつき、興味津々とばかりに食いついてきた。 「何が入ってるんですか」 「当ててごらん」 籐籠の中でガサガサ新聞紙の動く音。 「先生の家、猫飼ってたから……、子猫?」 「ハズレ。家の猫はみんな避妊済み。正解は――」 籐籠のふたを開ける。 柵状の中ぶたの内側で、ネズミ大の小さな生き物が細かくちぎった新聞紙に足を取られながら動き回っている。 「ポケモンだ~っ」 「ハムスターのまりも。どうぞよろしく。かわいい名前だろ」 「飼っていいの?」 「ご両親を説得できたらね」 素に戻った迷はひと息つくと、無駄だよ、とつぶやいた。 「今までだって動物を飼ってもらったことなんて一度もなかった。 お父さんは忙しいし、お母さんは動物嫌いだし」 動物を飼うという夢を反対されるうちにくじけてしまう気持ちはよく分かる。 次の子はきっと救ってみせる、と涙を呑んで元の場所に子犬を置いてくるやるせなさ。 それでも親に了承を得るというプロセスは、子供が動物を飼う上で乗り越えなければならないヤマなのだ。 中ぶたを持ち上げて迷が触ろうとすると、まりもは指をつたって手のひらに乗った。 そのまま何かを訴えるように座り込む。 迷がまりもの目をじっと見る。 「わかったよあんたはあたしが守る。絶対」 僕に向き直る。 まりもは迷の手の中で漆黒の宝石みたいな目を、僕と新しい里親交互に向ける。 「この子の面倒はあたしが全部みるよ。親に頼らなくても立派に飼ってみせます。 だからお母さんには内緒にしておいて」
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