嘘くさいほど運命じみてる

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「じゃ、またな。夏休みは遊ぼうぜ!」 「おー、メールするわ。」 専門学校の帰り道。クラスメイトに手を振って、足早にアパートへ向かう。今日で一学期が終わって明日からは夏休みが始まるのだ。まあしかし、夏休みだろうと何だろうと暑いものは暑い。 どっちにしろ、俺に楽しいことなんて何も無いのだ。 (あっつー。早く帰ろ。) 日の陰った道を探しながらぼんやりと考える。何か楽しいことでも始まらないかなー、なんて。 改札を出るとむせ返るような暑さ。疎ましいくらい白い照り返しにため息をつきつつ一人ホームを歩いて、もうすっかり夏らしくなったことを感じた。 直射日光から逃げるように地下鉄のホームに向かってひたすら階段を降りる。丁度やって来た車両に乗り込むべく少し走って、やっと階段を降りきったところ。 彼は、突然現れた。 ああ、君は背が高いから目立つんだよ。ほら、その白いヘッドフォンだって。 「あれ?山ちゃん?!久しぶり!俺だよ!覚えてる?高校の時同じクラスだった中島!」 「覚えてるよ、久しぶり。」 俺がそう言うと、彼は嬉しそうににこにこ笑った。 少し喋って、たまたま降りる駅が同じだったから数分間一緒にいた。喋るといっても他愛もない話ばかりで。ただそれだけ。それだけなのに。 あー、失敗した。アドレスぐらい聞いておけばよかった。なんて、別に後悔するほどのことじゃ…。 あの角を曲がればもうマンションが見える。もう少しだ…! そういえば今朝隣の部屋に誰か引っ越して来てたな。可愛い子だといいけど、どうせおっさんだろ。と、期待は小さめに。 じゃあ、またね!と手を振る彼を思い出す。久しぶりに見る彼はいつもの如く爽やかで、やけに眩しかった。なんか、あれだな。まるで、 太陽みたいなやつだ。 『隣に越してきました!今日からよろしくお願いします!』 『よろしくお願いします…、え?』 『え?あっ!』 “また会ったね” おわり
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