the biginning

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私の名前はザツィータ。 生まれてから今まで、親の顔を見たことが無い。   写真すら持っていない。 だけど私はそれについて一度も、寂しいとか、悲しいとか、感じたことは無い。 元々感情の起伏が激しくないから、というのもあるかもしれない。 幼い頃からあまり泣くことも無かったし、怒ることも無ければ、笑うことも無かった。 街の人々は私を淡泊で薄気味悪い子供だと怖がっていたけれど、私を育ててくれたエリィは、そんな私にも恐縮したりすること無く、いつも持ち前の明るさと笑顔で接してくれた。 首に下げてるこのネックレスもエリィが私の16歳の誕生日に作ってくれたもので、トップに付いてるのは小指サイズの細長い石。 赤く煌めくガーネット。 決して、 パカッと開けるとそこには大切な人の微笑む顔が…… とかいう幸せの形見などでは無い。 けれど、私にとってはとても大切な物。 この石の中には―――私の血が流れている。 エリィはこれを作る時、私の親指の先に特殊な形をした小刀で十字型を刻み、その時溢れた血を石に垂らした。 割と痛みにも平気な私はそのまま放置しておこうと思ったけど、エリィに「傷口が化膿したらどうするの!」と怒られ、手当をしてもらった。
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