the biginning

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一週間後、もう大丈夫だろうと親指に巻いた布を外してみると、驚いたことに傷跡は消えるどころかくっきりと指の表面に綺麗に残っていた。 すぐにエリィの元に行き傷跡を見せると、エリィは驚いた様子も無く傷跡を見つめた。 「あら、良い感じ。やっぱりあたしの腕が良いのねぇ~」 「ねぇ、何で跡が残ってるの?」 私はエリィの自画自賛を聞き流し、疑問をぶつけた。 「あっ、聞き流すなんてひどーい! あのね、それは‘ブラッドスカー‘と言って、あたしは略してBSって言ってるんだけど、簡単に言うと…危険察知レーダーの様な物なの」 「…ふぅーん」 「ちょっと、ふぅーんって!」 エリィには私の反応が面白く感じたらしく、一人で笑い出した。 「あはは! ごめんごめん…。てっきり、何それ?とかいう反応が返ってくるかと思ったから…」 それからエリィは、‘ブラッドスカー‘についてと、他にも色々と詳しく教えてくれた。 エリィは秘密結社の一員である事。 任務は主に、危険人物を見つけ、情報を収集し、規定の危険度レベルを超えている者の場合は―――暗殺する事。 危険人物との距離が半径100m以内になると親指の傷跡が疼き、察知させてくれる事。 週に一度は必ず体力テストを受けなければいけない事。 ハンサムでとてつもなく厳しいBOSSがいる事。 エリィの上司は52歳の太ったジョニーという男で、一日最低5回はエリィに求婚してくる事。 (ちなみに求婚された回数は通算2689回だとエリィはけらけら笑っていた。) 私は話を聞いている内に、エリィが所属するその秘密結社にとても興味が湧いた。 「秘密結社にはどのくらい人がいるの?」 私がそう訊ねると、エリィは「んー…」と右上の宙を見つめた。 考え事をする時のエリィの癖だ。 「大体200人くらいかしら?」 「以外に少ないんだね」 「そうねぇ。昔はもっといたんだけど、あれから10年経って随分と減ったから…」 エリィは宙を見つめながら顎に右手を添えた。 その親指の先端にはうっすらと傷跡が見える。 「じゃあ、エリィは25歳の時に秘密結社の一員になったんだね」 「そうそう。あー…時が経つのは早いものねぇ」 エリィはしみじみと感慨深げに言う。
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