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「十年前は今よりもっと治安が悪くてね、毎日親指が疼いてたのよ」
エリィはうんうんと軽く首を縦に振る。
きっと当時の事を思い出しているんだろう。
私は一つ疑問が湧いたので訊いてみた。
「どうして今日この‘ブラッドスカー‘を私につけたの?」
「あぁ」と言ってエリィは微笑んだ。
「つい最近、‘BS規定年齢‘が最低25歳からだったのが最低16歳からに変わったの」
「‘ブラッドスカー‘をつけても良い年齢って事?」
「そうそう! で、昔程では無いけれど今も危険人物は結構いるし、‘自分の身は自分で守れ‘っていうのがうちの秘密結社の教えで、あなたに今すぐうちの仲間になれ、とは言わないけど、そういう道もあるっていう事を頭の隅にでも入れておいて欲しいなと思って」
ズズッとエリィはハーブティーをすする。
「もし秘密結社に入らなくても、BSがあればある程度は危険を回避する事もできるし。あなたには長生きして欲しいから」
エリィはにっこりと笑った。
「……ふぅん」
私もハーブティーをそっと飲んだ。
まだまだエリィに訊きたい事は沢山あるけど、ちょっと眠くなってきたし……。
続きはまた明日訊こう。
私はぬるくなったカップの中身を一気に飲み干した。
「もう眠くなってきたから、また明日色々聞かせて」
「そうね…あたしも今日はよく働いたし眠いわぁ。あ、ちゃんと歯磨くのよ」
「うん」と言って去ろうとすると、エリィが「あっ!」と声を上げた。
「ちょっと待ってて」
そう言ってエリィは奥の部屋に行き、またすぐに戻って来た。
「これこれ。あなたのお守り」
しゃらんっと音がして、私の目の前に赤く光る物が揺れた。
「あたしの力作! これは肌身離さずつけておくと良いわよ。ほら、あたしもつけてるし」
エリィは首元のネックレスを見せてきた。
その先端には、きらきらと光るエメラルドグリーンの丸い石がついている。
「それもエリィが作ったの?」
「そうよ~。綺麗でしょ?」
「うん。すごく綺麗」
「ふふっ。ありがと。さっ、寝ましょ寝ましょ」
エリィはふわぁっと欠伸をした。
「うん。おやすみ。……これ、ありがとう。大事にする」
「どういたしまして! さ、おやすみなさい」
エリィは優しく微笑んだ。
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