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その頃はまだ大和君の家のことはよく知らなかったけど今思えばあれは大和君の家と敵対している家の人間だったんだな。
「相模のガキじゃねぇガキも居るじゃねぇか。どうすんだこいつ。」
「無視だ無視。とりあえずこいつをひっ捕まえるぞ。」
「そうだな。」
事情は知らなかったけど「捕まえる」という言葉に俺は反応した。会話からして捕まえようとしているのは大和君だろう。
ジリジリと大和君が後退る。次の瞬間大和君は俺の腕を掴んで走りだした。
「ちょっ、」
「逃げたぞ!」
「ただのガキだ、大丈夫だろ。」
大和君だけなら良かった。でも俺は。
大和君の走るスピードについていけない鈍臭い俺はとうとう足がもつれて転んだ。
「安里ぃっ!!」
今まで見た中で一番恐い顔をして叫ぶ大和君。俺はいつの間にか泣いていた。
「ご、ごめんな、さいっ。」
「良いから早くっ!!」
「ガキ転んじゃってんじゃねぇかよ。」
俺のせいでさっきの人達に追いつかれてしまった。その人達は俺達が逃げたことに怒っているようで恐い顔をして手に持ったナイフをちらつかせた。
「手荒なマネはしたくなかったんだけど逃げるようじゃなぁ…。」
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