廃人について

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疲れた。こんなに歩くのは3年ぶりだ。しかも煩い。現在進行形で。暁月君の声が大きいことと周りの生徒の声。キャーキャーと甲高い声が寮の廊下を埋める。確かここは男子校だった気がするのだが…。俺が引きこもっている間に時代は変わったんだな。置いてかれた感に浸っていると佐倉君はある部屋の前で立ち止まる。 「ここは寮長の部屋だよ。」 そう言って佐倉君はその部屋のドアをノックする。するとすぐドアが開き、一人の男が出てきた。 「何や、副会長さんがどないな用で?」 出てきた男はまたもや美形。人懐っこそうな笑顔で俺と同じ茶髪。ただ彼の方が明るい茶髪だった。関西弁か。リアルで見たのは初めてだ。ビーハンではよく会ったことはあるのだが。 「転校生だよ。カードキー渡してあげて。」 「あぁ、あるよ」 そう言ってカードキーを持って来た男。ふとこちらを見て首を傾げた。 「あれ、転校生二人やったっけ?」 そう言った男に佐倉君は驚いた様子で言う。 「え、河波君のこと知らないの!?」 「河波!?河波って河波安里かいな!?」 凄い勢いで尋ねて来た男に若干引きながら小さく頷く俺。すると男は呆れたように言う。 「安里君なぁ、入学ん時に俺んとこに挨拶行けって言われなかったんか?そんなのに来ぇへんし。カードキーは事前に理事長が持って行くし。顔見に行こうと思ったら引きこもってるし。二週間一歩も部屋から出てへんよな!?寮長として軽く悩んどったんやぞ!?」 「す、すいません…。」 よくわからないがつまりこの人に会わなかったのが行けなかったらしい。でもその日は入学式同様イベント中だった為忙しかったんだ、仕方ない。俺が謝れば男は嘆息した後、また笑顔で言う。 「まぁ反省しとるみたいやしよしとするわ。俺の名前は木崎要-キザキ カナメ-。この寮を管理しているんよ。因みに海斗と副会長さんとは同学年。一個先輩や。」 「つまり宿主…。」 「ま、まぁそんなもんや…。」 俺の呟きに苦笑して言う宿主。それより佐倉君って副会長で先輩だったのか。暁月君がタメだったから同い年かと思った。これからは佐倉先輩だな。
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