其の一

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スタートラインの脇に立つ先生がピストルを頭上に上げると、彼女たちは『用意』の姿勢を取った。 ーーーー パアーン! ーーーー ピストルの乾いた音と共に一斉にスタートする。 始めはそれほど差はないものの、途中から一人の女子が前に出た。 ポニーテールを揺らしながら、彼女はぐんぐんと差をのばす。 そのフォームの美しさに、僕は足を止め、気付けば呼吸まで止めていた。 ゴールした彼女は、腰に手を当て呼吸を整える。 遅れてゴールしたチームメイトたちに囲まれて、飛びきりの笑顔を見せてくれた。 「あ、あの子…」 確か、同じクラスだったような。 名前は…えっと… まだ覚えてないや。 明日、話しかけてみようかな… 僕は再び歩き始めた。 校門を出る途中、もう一度彼女の方を見てみると まだチームメイトとおしゃべりをしている。 彼女だけ、輝いて見えたのは気のせいだろうか…
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