其の一

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翌日教室に入ると、彼女はまだ登校していないようだった。 席につき、教科書とノートを机の中に入れていると、女子が三人おしゃべりをしながら教室に入って来る。 来た…彼女だ! 「んもうっ!美咲ったら!」 一人の女子が彼女の背中をポンっと叩いた。すると彼女はまた、あのキラキラと眩しい笑顔を見せる。 美咲ちゃん…って言うんだ。 かわいいな… 今日もまたポニーテール。 黒い輪ゴムでまとめているだけのシンプルなものだけど、彼女に余計な飾りなど必要無いと思った。 ちらちらと彼女の姿を目で追う。 すると彼女は、僕の席から二つ前の席にカバンを置いた。 席…こんなに近かったんだ。 そうか、いつも背中ばかり見ていたから、彼女ががあんなに素敵な笑顔で笑うって、知らなかったんだ。 ぼーっとそんな事を考えていると不意に 彼女と目が合った。 ーーーー ドキンッ ーーーー
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