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「なんだ……ユウ、か…」
「悪かったな、バカ兎じゃなくて。」
神田が、蓮の側に片膝をついてしゃがみこむ。
彼の皮肉とも取れる言葉に、蓮はつい一時間前に見たラビの笑顔を思い浮かべ、弱く笑う。
「いいよ……今の私見たら、どうなることか……」
そう笑いながら言う蓮に、これから死にゆく恐怖はないよう。
神田は周りを見渡し唇をかみしめながら問う。
「なんで【薔薇ノ終焉(ローズ・エンド)】なんて使ったんだよ…」
「…やばかったんだもん……死ぬなら最後までエクソシストらしく、さ。」
【薔薇ノ終焉(ローズ・エンド)】。
蓮のイノセンス【薔薇ノ女神(ローズ・アルテミス)】の最大限解放であり、適合者の命を引き換えにする禁忌。
それを、蓮はエクソシストである自分の意志で、発動させた。
少しずつ、蓮の息が荒くなっていく。
「……そろそろか?」
「ん………」
蓮の様子に静かに神田が問いかける。
蓮は小さく相槌をうちつつ、顔を上げてしっかりと神田と目線を合わした。
「ユウ、今までありがとう。コムイとか教団のみんなにもよろしくね。あと、」
はあ、と一息ついて、蓮は続ける。
「ラビにはずっと愛してるって伝えて。絶対によ?またいつか会えるって………」
その言葉を最後に蓮の目が閉じられる。
微かな呼吸音も消え、まるで眠っているかのような安らかな顔。
神田は自分の羽交いなさに悔しそうに顔を歪ませ、だが優しい手つきで蓮の頭を撫でた。
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