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「あ、ちょっとラビ!!」
コムイが引き止めるも、すでに姿が小さくなった彼の耳には届くはずもなかった。
「いいんですか、室長?」
「まあ…任せとくか、ラビに。」
そう言ってコムイは苦笑いして自慢げな彼の顔を思い浮かべながら、赤髪の後ろ姿をほほえましそうに見つめていた。
一方、当の本人はというと…
「ふぅ……」
小さくため息をついて、教団の屋根の上にいた。
目下には鬱蒼と森が続き、はるか先にヴァチカンの市街の明かりがイルミネーションのように広がっている。
そしてまだ終わることのない千年伯爵との戦いを示唆するように吹き荒れる強い風が、蓮の長い黒髪をなびかせていた。
彼女は隣にちょこんと座るティムと対になる彼女のゴーレム―コルムを撫でながら、壮大な風景を眺めていた。
と、そんな彼女の耳がはるか下からの聞き慣れた声を捕らえた。
「伸っ!」
小さな声と、少しずつ近づく気配。
そちらの方に顔を向け、屋根の端から赤い髪が覗いたかと思うと、自身のイノセンス―鉄槌に乗ったラビが現れた。
「………やっぱりいた。」
目にかかる前髪をかきわけながら笑みを浮かべる彼を、蓮は表情も変えず見つめる。
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